"村上春樹の小説の魅力は、そこには“ただ優れた小説がある”だけで、作者の個の発露や自我を感じさせる部分がほとんどないことだと僕は思っている。僕らが学校で教わってきた読書の方法として、本を読むことによって自我と出会うとか、自己を発見するために本の力を借りるなんてことを再三言われてきた。その影響はとても大きく、最近の日本の小説家なんか、小説としての構築の度合いより自我をどう作品に挟み込んでいくかを優先しているようなものがとても多いと感じる。村上文学にはそれが一切ない。繰り返すが、そこにあるのはただ圧倒的な小説世界だけなのだ。その完成度、小説自体の持つ力の大きさだけで、読者を完璧に圧倒してしまう。"